とある駅での出来事

 滋賀県内のびわこ線の駅にはほとんどエレベーターが設置されてきている。
 今、膳所駅篠原駅稲枝駅が建替えに伴い、エレベーターも設置されることだろうと思うが、工事の最中だ。
 が、まだエレベーターの設置が普及していなかった時代に(10年から15年程前かな?)変形型のエスカレーターを設置した駅が2駅あったのだ。
 この「変形型エスカレーター」とは、人が操作することで階段状の形状が3段だけ平らになり、車椅子も水平のままそのエスカレーターに乗り込み上がり下りできるという特殊なエスカレーターなのだ。
 ちなみに、このエスカレーターは全国的にちょこちょこ設置されている駅はあるが、事故が何件か起きている危険なモノだということが分かってきている。上から下に下りる時にそれに乗り込んで下りる操作を行ったら、平らだった部分が階段状に戻り、車イスに乗っていた人は、重たい電動車イスごと落ちてしまい、重症を負ったと聞く。おまけにその鉄道会社とエスカレーターの製造メーカーは原因究明もしないままだという。
 オレは幸いそんな目には遭っていないが、乗らなければならない時は怖さはある。
 まあ、それはともかく、昨日そのエスカレーターしかない駅(つまりそのエスカレーターがあるがゆえに、エレベーターは設置されていない駅)に降りなければならなくなり、その駅で電車を降りたのだ。
 そして、偶然降りた場所がそのエスカレーターの乗り込むところに近く、今は駅員が操作することになっているそのエスカレーターにすぐに乗り込めると思っていた。
 ところが、駅員は一向に操作するために動こうとはしないのだ。
 ちょっと急いでいたこともあり、遅いなあと思いながら、他の2歩足で歩く人たちがそのエスカレーターに先に先に乗って行くのを見ていたが、まだ駅員は動こうとはしない。
 2分から3分待って、他の客がほぼホームからはけた頃、「まだか?」と後ろにいた駅員に聞いたのだ。すると、「あのお客さんが、エスカレーターを降り切ってからです。」という答えが返ってきた。
 そうなのだ。同じ電車から降りた人が全員ホームから居なくなり、そのエスカレーターを降り切るまで待たされたのだ。そして、やっと操作を開始して、段が平らになった面が出てきた時に、これもやっと「お待たせしました」と一言だけ言ってきたのだ。その一言で怒りは収めることにした。それはその駅員が若かったことと、少し急いでいたこともあったが。
 しかし、こんなバカなことはない。都会ならもっと電車の本数も多く、人も多いので、こんなことをしていたらいつまでたっても乗り込めないし、第一、「障害者は後回し」「健全者優先」「障害者は待たして当然」という意識が、「障害者は迷惑な者」だという意識が、この駅員には作られていると思った。
 ちなみに、都会ではそのエスカレーターに車イスが乗り込む時は、その乗り込み口と降りるほうに簡単な柵をつくり、2本足が入れないように通行止めをして段差を平らにする操作をし、平らな面が出てくるまでの待ち時間はあるが、2本足はその間、階段を使って上り下りしてくれるように駅員がしてくれ、最低限の待ち時間で乗り込めるようになっている。
 で、帰りにまたそのエスカレーターを使い、ホームに降りなければならず、電車を降りた時とは違う駅員が対応してくれたが、歳もそれほど若くは見えなかったので、一応「苦情」という形で上記のようなことを言っておいた。
 私に起きたことは、私だけの問題ではなく、車イスに乗ってその駅を使う全ての人たちの問題であり、障害のない人たちも障害者をそのように思ってしまう、障害のない人たちの問題でもあるのだということを若い人たちには分かってほしいなぁ〜と心から願う。